施術管理者の要件に関する柔道整復施術療養費の疑義解釈(個別指導:整骨院・接骨院)
柔道整復師(整骨院・接骨院)においても、医科、歯科、薬局と同様に、厚生局による不正のチェック、監査の仕組みがあり、柔整の施術所・柔道整復師に対して、医歯薬と類似する形で厚生局により個別指導、監査が実施されています。
そして、医歯薬と同じように、厚生労働省が療養費の請求に関する疑義解釈をウェブページ上で公表しています。
ここでは、地方厚生局医療課など宛の平成30年5月24日付けの事務連絡である、「柔道整復施術療養費に係る疑義解釈資料の送付について」を抜粋の形でご紹介します。新たな仕組みの施術管理者の要件関係の疑義解釈が中心です。
施術所(柔道整復師)への個別指導、監査への対応は、施術管理者が(中心に)行うものであり、整骨院、接骨院においては、施術管理者について的確に理解し対応することが求められます。本記載は、関東信越厚生局のウェブページで公表されているものに基づいています。
柔道整復師の方は、内容を確認いただき、整骨院の新規開設や整骨院の療養費の請求において、ご活用下さい。なお、整骨院の厚生局の指導監査については、柔整師への個別指導、監査(整骨院)の弁護士のコラムのウェブページが参考になります。
柔道整復施術療養費に係る疑義解釈資料の送付について
柔道整復師の施術に係る療養費(以下「柔道整復療養費」という。)の取扱いについては、「「柔道整復師の施術に係る療養費について」(平成22年5月24日保発0524第2号)等により実施しているところであるが、今般、その取扱い等に係る疑義解釈資料を別添のとおり取りまとめたので、参考までに送付いたします。
関係者に周知を図るとともに窓口での相談対応等にご活用いただき、個々の事案の状況により判断する際の参考とされますようお願いいたします。
【柔道整復療養費の受領委任を取扱う施術管理者の要件関係】
【証明関係】
(問1)
平成 29 年 3 月以前に柔道整復の養成施設(大学・専門学校)を卒業し、柔道整復師の資格を取得している者であって、実務経験1年以上を満たしている者が平成30年4月以降に施術管理者になる場合は、研修受講のみで良いか。
(答)
平成30年度における受領委任の届出は、柔道整復師の資格取得後の期間のうち、受領委任の取扱いを行うとして登録された施術所で柔道整復師として実務に従事した経験の期間(雇用契約の期間)を実務経験期間証明書により1年以上の証明が可能であれば、研修の受講のみ必要となる。
平成30年4月以降の受領委任の届出には、実務経験期間証明書の写と研修修了証の写の添付が必要であり、届出で証明が必要な実務経験期間は、平成33年度までは1年間、平成34年度及び平成35年度は2年間、平成36年度以降は3年間と、届出を行う時期に応じて段階的に実施することとしている。
(中略)
(問5)
以前に務めていた施術所で自身が施術管理者であった実務経験の期間は、誰が証明するのか。
(答)
自身が施術管理者であった登録施術所が現存している場合は、現在の開設者又は施術管理者が証明することとなり、登録施術所が廃止となっている場合は、開設者であった者又は自分自身となる。
なお、いずれの場合であっても、当該施術所での雇用契約の期間を確認したうえで、証明することとなる。
(問6)
勤務していた施術所が閉鎖され、管理者(開設者及び施術管理者)の実務経験期間証明書の交付を受けられない場合の証明はどうなるのか。
・実務経験の証明は、公的機関等の発行する書類が必要となるのか。
(答)
実務経験証明書は、受領委任を取扱う施術所における雇用契約期間について、施術所の管理者(開設者又は施術管理者)が証明する。
登録施術所の廃止などにより、管理者(開設者又は施術管理者)の実務経験期間の証明が不可能な場合、「氏名、生年月日、従事期間」欄を記入した実務経験期間証明書に加え、公的機関が発行する書類(例えば、雇用保険における離職票)や当該施術所からの給与の支払が確認できる書類など、第三者による雇用契約関係の事実を証明する書類の添付が必要である。
【実務経験関係】
(問 10)
実務経験期間とはどのような期間なのか。
・平成 30 年4月以降の期間のみ対象か。
・施術管理者として勤務していないと、実務経験として認められないのか。
(答)
開設者又は施術管理者が実務経験期間証明書により証明する実務経験期間は、柔道整復師の資格取得後の期間のうち、受領委任の取扱いを行うとして登録された施術所において柔道整復師として実務に従事した経験の期間(雇用契約の期間)であり、当該施術所の施術管理者又は勤務する柔道整復師の勤務(雇用契約)期間である。
(問 11)
勤務柔道整復師として登録されていたが、正式雇用ではない場合の取扱いについて施術所でのアルバイト期間でもいいのか。
(答)
登録施術所の管理者(開設者又は施術管理者)が雇用契約期間を確認したうえで「実務経験期間証明書」に証明するものであり、証明において雇用形態(常勤、非常勤、パート、アルバイト)や勤務時間は問わない。
なお、雇用契約内容が、他の常勤の勤務柔道整復師の勤務時間の3分の2未満であるなど、いわゆる短時間労働者であった場合でも雇用契約期間として認められるものであれば実務経験期間証明書の作成は可能である。
(問 12)
施術管理者としてではなく、勤務する柔道整復師として働く場合、実務経験期間証明書の写と研修修了証の写は必要になるのか。
(答)
施術所に勤務する柔道整復師として働く場合には、実務経験期間証明書の写と研修修了証の写は必要としない。
(中略)
(問 14)
実務経験期間に、機能訓練指導員の勤務期間は含まれるか。
(答)
実務経験期間は、柔道整復師の資格取得後の期間のうち、受領委任の取扱いを行う登録施術所で柔道整復師として実務に従事した経験の期間(雇用契約の期間)。
機能訓練指導員の勤務期間は含まれない。
(問 15)
現在、柔道整復の養成施設の教員として勤務している。
教員の期間は実務経験に含まれるか。
(答)
受領委任の取扱いを行うとして登録された施術所で柔道整復師として実務に従事した経験の期間(雇用契約の期間)ではないため、実務経験期間には含まれない。
また、養成学校の教員の資格があることをもって、実務経験の期間を認めるものではない。
なお、当該者が施行日後に新たに受領委任の届出を行う場合、養成施設の教員になるために実務経験を積んだ施術所が登録施術所であれば、当該施術所の管理者から、実務経験期間の証明を受ける必要がある。
(問 16)
施術管理者の要件として実務経験を積むための施術所としては何か登録が必要となるのか。
(答)
新たな施術管理者の登録の際に必要となる実務経験を積むための施術所としては、受領委任の届出のほかに必要な手続きはない。
(問 17)
「柔道整復師の施術に係る療養費の受領委任を取扱う施術管理者の要件について」(平成 30 年 1 月 16 日付保発第 0116 第2号)の別紙1「柔道整復療養費の受領委任を取扱う施術管理者の要件に係る取扱について」の4(2)「関係法令等を遵守した上で、不利益な取扱いを行わないこと。」の「不利益な取扱い」とはどういうものか。
(答)
登録施術所の管理者(開設者又は施術管理者)による適正な雇用を確保するための記載である。例えば、実務経験期間を証明することを理由として、無償で雇用契約するようなことを禁じるためのものである。
(問 18)
実務経験を受け入れた場合の雇用条件は、施術所ごとの判断でよいのか。
(答)
各施術所ごとの判断となるが、関係法令等を遵守したうえで不利益な取扱いを行わないようにするべきである。
【研修関係】
(問 19)
研修の受講は、実務経験を満たす前に受講しても良いのか。
(答)
そのとおり。
(問 20)
現在、償還払のみを取扱っている施術所(受領委任の届出を行っていない)の柔道整復師も、研修受講の必要があるか。
(答)
引き続き、償還払いのみを取扱う施術所は必要ないが、今後、受領委任を取扱うとして受領委任の届出する場合は、地方厚生(支)局又は都府県事務所へ受領委任の届出書類の添付資料として、実務経験期間証明書の写と研修修了証の写が必要である。
(問 21)
研修は全ての柔道整復師に対して義務となるのか。
(答)
柔道整復師の資格を取得している全ての者に対しての義務ではなく、新たに受領委任を取扱う施術管理者となる場合は、地方厚生(支)局又は都府県事務所へ受領委任の届出書類の添付資料として、実務経験期間証明書の写と研修修了証の写が必要である。
(問 22)
柔道整復師の免許取得後、すぐに施術管理者の研修を受け、実務経験を満たした後、施術管理者として申請しても良いか。
(答)
良い。
研修は、研修受講を修了した証明として、研修修了証を交付されることとなり、研修の終了日から5年間の有効期間が設けられている。
研修修了証に記載の有効期間中に、受領委任の届出を行う場合は、新たに研修を受講する必要は無いが、有効期間を経過後、新たに受領委任の届出を行う場合は、あらためて、研修を受講する必要がある。
(問 23)
受領委任の届出の後に研修を受講することは可能か。
(研修受講の前に受領委任の届出は可能か。)
(答)
新たに受領委任の施術管理者となる要件の実務経験期間と研修修了が証明可能となった時以降に、受領委任の届出を行うものである。
(特例措置に該当する場合は除く。)
平成30年5月24日付けの事務連絡の疑義解釈(抜粋)は以上のとおりです。
整骨院、接骨院を開業するとき、また、日常の施術や、厚生局の個別指導となってしまった際など、冒頭にご紹介した柔道整復師への個別指導と監査のコラム一覧とともに、柔整師の方はご活用下さい。
なお、以上は、柔道整復師に関するものですが、あはき師(あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師)についても厚生局の個別指導、監査の仕組みが、整骨院に対するものと類似した形で存在します。こちらのあはきの施術所の受領委任の取扱いの中止の事例も、整骨院に対するものとの類似性から参考になります。興味ある方は、あはきの厚生局の個別指導(あん摩マッサージ師・はり師・きゅう師)、監査、中止のコラムをご覧いただければ幸いです。
厚生局による接骨院への個別指導、監査の実例
ここでは、厚生局による接骨院への個別指導、監査の実例を4つ、ご紹介します。
柔道整復師への厚生局の指導監査の仕組みを知るためには、実際に受領委任の取扱いの中止の措置となった事例を多数理解することが近道です。どのような経緯で個別指導となるのか、監査に移行する流れはどうなっているのか、中止の措置は具体的にどの程度の不正のレベルでなされるのか、これらは、ケースバイケースであり、多数の事例を知ることで、相場観的なものがおぼろげながらわかってくることが期待できます。
接骨院への中止措置の流れなどは、医療機関への取消処分の流れとは異なる部分も複数見受けられますところ、双方の違いを知ることも、より深い接骨院への指導監査の理解に繋がると思われます。医療機関の個別指導の実例については、弁護士による以下のコラムが参考になります。
また、厚生局のあはき(はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師)の施術所への個別指導・監査は、同じ受領委任の仕組みであり柔道整復師に対するものとより類似していますので、こちらの中止の実例も参考になると思われます。
あはきの厚生局の監査(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師)
1 東海北陸厚生局の無資格者施術の情報提供での監査
柔整師の資格の無資格者が施術をしているという情報提供があり、東海北陸厚生局の監査となり、柔整師の監査拒否、監査の欠席で受領委任の取扱いの中止相当となった実例です。監査に欠席すると、中止などになることに加え、柔道整復師の資格の業務停止などの行政処分においても、不利に重く扱われ得るので、監査の出席を求められた場合は、ストレスでも、出席し対応することが望まれます。
【中止相当事例の経緯・概要】
東海北陸厚生局に、保険者から、接骨院で免許のない者が行った施術で療養費を請求していた疑いがあるとの情報提供があり、そこで、患者調査を実施したところ、無資格者が施術したもので療養費を不正に請求していることが疑われたことから、柔道整復師に対しての監査の実施に至りました。
東海北陸厚生局の監査の実施について、柔整師が、3回にわたり、正当な理由なく続けて監査を欠席したため、受領委任の取扱いの中止相当となりました。
生活保護法の指定取消し処分で不正請求が疑われ、関東信越厚生局の患者調査が実施され個別指導となり、監査、受領委任の取扱いの中止となった実例です。生活保護法の指定取消処分から受領委任の中止に結び付いており、あまり多くないケースという印象です。生活保護法の不正調査の手続きについては、最悪でも生活保護が利用できなくなるだけだと軽んじる風潮があるかもしれませんが、本例のように、健康保険の利用ができなくなることに繋がり得るため、生活保護の施術が売り上げに占める割合が低くても、決して軽んじることはできないことに留意する必要があります。
【中止事例の経緯・概要】
東京都は、接骨院に対して施術報酬の請求に係る不正(付増請求)が認められたことから、生活保護法に基づく指定施術機関の指定の取消し処分を行いました。その後、受領委任に係る被保険者についても付増請求が行われている疑いが生じたことから、関東信越厚生局と東京都が複数の患者に対して実地調査を行ったところ、実際の通院日数や負傷名等が療養費の請求内容と大幅に相違していることが確認されたため、接骨院において更なる不正請求が行われている疑いが強まり、そこで、接骨院に個別指導を実施したところ不正請求の疑義が生じたため、監査の実施に至りました。
監査では、実際に行った施術に行っていない施術を付け増して施術録に不実記載し療養費を不正に請求していたこと(付増請求)、療養費の支給対象外の症状に対して行った施術を支給対象となる負傷に対して行ったものとして施術録に不実記載し療養費を不正に請求していたこと(支給対象外の症状の不正請求)、業務上の負傷に対して行った施術を支給対象となる負傷に対して行ったものとして療養費を不正に請求していたこと(業務上の負傷の不正請求)、監査の中で報告を徴したにもかかわらず施術管理者は施術録を書き換えた上で虚偽の報告を行い再三にわたり正しい報告を求めたが最後までこれに応じなかったこと(虚偽報告)が確認・認定され、以上により、受領委任の取扱いの中止となりました。
3 交通事故の不正請求(詐欺)と厚生局の監査
柔道整復師が交通事故の保険金詐欺未遂で逮捕され、その後、厚生局による健康保険の療養費の不正請求での監査となり、受領委任の取扱いの中止相当となった実例です。この事例のように、接骨院の施術に関する保険金請求で刑事事件となった場合、その後に厚生局の指導監査の枠組みでの中止の措置に繋がることが多く、また、保険金詐欺での有罪判決となった場合など、柔整師の免許・資格の行政処分(業務停止など)に結び付きますので、十分に注意する必要があります。なお、交通事故の不正請求については、損害保険会社が不正を調査し、指摘などしてくることがありますが、こちらについては、以下の弁護士のコラム一覧が参考になります。
交通事故の不正請求・保険金詐欺と損害保険会社の調査の弁護士のコラム一覧
【中止相当事例の経緯・概要】
交通事故による接骨院への通院日数を水増しして、保険会社に請求し、保険金をだまし取ったとして、保険金詐取未遂容疑で逮捕したとの新聞報道があり、そこで、厚生局は、療養費についても不正に請求していることが疑われたことから、柔道整復師に対する監査に至りました。
監査の結果、架空請求、すなわち、施術を行っていないにもかかわらず施術を行ったものとして療養費を不正に請求していたこと、付増請求、すなわち、実際の施術日以外に施術を行ったものとして施術日数を付け増して療養費を不正に請求していたことがそれぞれ確認・事実認定され、そこで、受領委任の取扱いの中止相当となりました。
4 詐欺での有罪判決後の近畿厚生局の監査
柔道整復師が柔道整復施術療養費の詐欺で逮捕され、有罪判決となり、それにより近畿厚生局の監査が開始され、受領委任の取扱いの中止相当となった実例です。厚生局で不正請求が認定された場合、実際には故意があり刑法上の詐欺罪が成立しているケースも少なくないと思われますが、厚生局の中止の措置から刑事事件になることは原則としてはなく、逆に、刑事事件となり有罪判決なった場合は、厚生局の指導監査の枠組みから中止となることが多いことに留意する必要があります。
【中止相当事例の経緯・概要】
柔道整復施術療養費をだまし取ったとして、接骨院の経営者及び柔道整復師が詐欺容疑で逮捕され、その後、裁判所で被告両名に対し有罪判決が言い渡され判決が確定したことから、柔道整復師に対しての監査の実施に至りました。
監査の結果、施術を行っていないにもかかわらず、施術を行ったものとして、療養費を不正に請求していたことが確認・認定されたため、受領委任の取扱いの中止相当となりました。
保険医療機関での本人確認の事務連絡(行政通知)に関するコラム
保険医療機関等(医科、歯科、薬局)では、厳格な患者の個人情報の管理、患者の個人情報の取り扱いが求められます。
保険医療機関等(医科、歯科、薬局)においては、日々保険証の確認、取扱いが求められますが、その扱いについては、医療機関等ごとに様々である印象です。特に、医科、歯科の個人の診療所においては、院長の方針や考え方により、対応は大きく変わります。
厚生局の個別指導、特に歯科においては、健康保険の保険証の扱いについて、口頭で厚生局の事務官から確認されることが多いのですが、細かく厳密に確認されるのではなく、ざっくりと明らかに不適切という場合に、改めるよう指摘されているイメージです。よく指摘される点としては、保険証のコピーを患者の承諾を得て紙ベースで取得し、それをカルテに添付し保管を続けていることは、患者の個人情報保護の観点から不適切であり、コピーをそもそも取得しないか、取得する場合は必要性がなくなれば速やかにシュレッダーなどで廃棄する、という点です。医科、歯科、薬局の保険医療機関等だけではなく、整骨院、接骨院の個別指導(柔整)でも、同様の指摘が厚生局側からよくなされます。
さて、ここでは、保険医療機関における本人確認について、オンライン資格確認の運用開始に起因する新しい行政通知が、令和2年1月10日付けで、厚生労働省保険局から出ましたので、一部の抜粋の形でご紹介をさせていただきます。
保険医療機関等において本人確認を実施する場合の方法について
保険医療機関及び保険薬局(以下「保険医療機関等」という。)において本人確認を
実施する場合の方法について、下記のとおり示すため、内容を御了知の上、適切に御
対応頂きたい。なお、本通知は、保険医療機関等に本人確認を義務付けるものではな
いことに御留意頂きたい。
記
第1 基本的な考え方
1 本人確認の必要性について
(1) 医療保険制度の健全運営を維持する観点
医療保険制度は、保険料を納付することで保険給付が受けられる仕組み(被保険者証は適切に保険料を納付している者であることを保険者として明らかにする証)であることから、他人の被保険者証を流用した受診が行われた場合には、保険料の納付なしで保険給付がなされることとなるため、持続的な保険財政の確保の観点から問題が生じる。また、保険料を適切に納付している被保険者の医療保険制度への信頼感を損なうおそれがあること。
(2) 保険医療機関等を受診する患者の医療安全の観点
過去に被保険者証記載の本人が受診したことがある保険医療機関等において、他人が偽って受診した場合、過去の診療記録を基に医療が提供された結果、身体に異常を来すことなどのおそれがあること。
(3) 犯罪被害を防ぐ観点
他人の被保険者証を流用した受診は、詐欺罪(刑法第 246 条)等に当たり得ること。
(中略)
第2 保険医療機関等における本人確認の具体的な方法について
保険医療機関等において、窓口での本人確認の必要性が高いと考える場合は、過去の診療履歴等により本人であることが明らかな事例や本人確認書類の提示が困難な子どもの事例など、一定のケースを除いて、外来患者に幅広く本人確認書類の提示を求めることができる。その際、本人確認が恣意的に行われることで患者に混乱が生じることがないよう、以下の点に留意して本人確認を行う。
なお、上記のような幅広い範囲での本人確認を実施しない保険医療機関等においても、例えば、過去の診療履歴等に照らして血液型や身長が違っているなど、本人であることに合理的な疑いがある場合に、個別に本人確認を行うことは差し支えない。
(1) 保険医療機関等の判断で本人確認を実施する場合には、国籍による差別とならないよう、国籍に応じて本人確認の実施の有無を判断しないこと。
(2) 提示された被保険者証が本人のものでないと判断される場合には、当該被保険者証を用いた保険診療は認められないが、すべての患者が顔写真付きの本人確認書類を所持しているわけではないことに鑑み、本人確認書類が提示されなかったことのみをもって保険診療を否定しないこと。
(3) 本人確認書類(写真付き身分証)については、以下に掲げるものを参考とすること。
(写真付き身分証の例)
運転免許証、運転経歴証明書(平成 24 年4月1日以降交付のもの)、旅券、個人番号カード(マイナンバーカード)、在留カード、特別永住者証明書、官公庁が顔写真を貼付した書類(身体障害者手帳等)
行政通知(一部の抜粋)は以上となります。
保険証の取扱いについては、厚生局の医療機関への個別指導でも(ケースによっては)問題とされることがあり、指摘事項として挙げられることもありますので、保険医療機関等(医科、歯科、薬局)の運営において気を付けているところと思われますが、本人確認については、腰を落ち着けて検討したことがない方も多いかもしれません。
なりすましなどの悪質なケースも実際に存在しますので、本人確認の方法、ルールについて、きちんと院内・局内でマニュアル化し、周知徹底の上で、適切に運用することが望まれます。
特に近年では、マイナンバーカードの健康保険証としての取扱いに関して、行政の運用が大きく変わりうるところですので、最新の情報を注視していくことが重要です。
厚生労働省の事務連絡:令和元年台風第19号での一部負担金等の事務連絡について
厚生労働省は、保険診療に関して、医科、歯科、薬局などに対し、様々な事務連絡を文書で行っており、医療機関側としては、これにキャッチアップすることが求められます。事務連絡は、個別指導・監査に(間接的に、または場合により)関係することになります。
ここでは、令和元年の台風19号に関して、厚生労働省による、保険診療などの一部負担金の支払いが困難な患者さんについて、配慮することを定めるなどした事務連絡(抜粋)をご紹介します。医科、歯科の医療機関、薬局は、保険診療などにおいて、当該事務連絡を把握し、患者さんに理解のある対応をすることが求められます。
厚生局による医科などの保険医療機関への個別指導とは直接の関係はありませんが、保険診療において重要ですので、取り上げることと致します。
令和元年台風第 19 号に伴う災害の被災者に係る一部負担金等の取扱いについて
令和元年台風第 19 号に伴う災害の被災に関し、一部負担金、保険外併用療養費、訪問看護療養費、家族療養費又は家族訪問看護療養費に係る自己負担額(以下「一部負担金等」という。)の支払いが困難な者の取扱いについて、下記のとおりとするので、貴管下保険医療機関、被保険者及び審査支払機関等に対し、周知を図るようよろしくお願いしたい。なお、周知に当たっては参考資料の「医療機関・薬局向けリーフレット」及び「患者向けリーフレット」を各保険医療機関、避難所等に配布頂き、特に「患者用リーフレット」については、院内掲示、窓口での配布等を促して頂きたい。
記
1に掲げる者については、保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和32年厚生省令第15号)第5条及び第5条の2、保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(昭和32年厚生省令第16号)第4条、高齢者の医療の確保に関する法律の規定による療養の給付等の取扱い及び担当に関する基準(昭和58年厚生省告示第14号)第5条及び第5条の2並びに指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準(平成12年厚生省令第80号)第13 条の規定による一部負担金等の支払いを受けることを、2に掲げる期間猶予することができるものとする。なお、入院時食事療養費及び入院時生活療養費(保険外併用療養費及び家族療養費に係る食事療養及び生活療養に係るものを含む。)については、標準負担額の支払いを受ける必要がある。
1 対象者の要件
(1)及び(2)のいずれにも該当する者であること。
(1) 以下に掲げる被保険者又は被扶養者であること。
① 別紙1に掲げる市町村(特別区を含む。以下同じ。)の国民健康保険法(昭和33年法律第192号)第5条の被保険者(市町村国保の被保険者)
② 令和元年台風第19号に伴う災害に係る災害救助法の適用市町村に住所を有する高齢
者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)の被保険者であって、別紙1に掲げる後期高齢者医療広域連合の被保険者
③ 令和元年台風第19号に伴う災害に係る災害救助法の適用市町村に住所を有する者(被災以降、適用市町村から他の市町村に転入した者を含む。)であって別紙2に掲げる健康保険組合又は国民健康保険組合若しくは健康保険協会の被保険者又は被扶養者
(2) 令和元年台風第19号により、次のいずれかの申し立てをした者であること。
① 住家の全半壊、全半焼、床上浸水又はこれに準ずる被災をした旨
② 主たる生計維持者が死亡し又は重篤な傷病を負った旨
③ 主たる生計維持者の行方が不明である場合
④ 主たる生計維持者が業務を廃止し、又は休止した旨
⑤ 主たる生計維持者が失職し、現在収入がない旨
2 取扱いの期間
令和2年1月末までの診療、調剤及び訪問看護
3 医療機関等における確認等
上記1(2)の申し立てをした者については、被保険者証等により、住所が1(1)の市町村の区域であることを確認するとともに、当該者の1(2)の申し立ての内容を診療録等の備考欄に簡潔に記録しておくこと。
ただし、被保険者証等を提示できない場合には、
① 健康保険法又は船員保険法の被保険者若しくは被扶養者である場合には、氏名、生年月日、被保険者の勤務する事業所名、住所及び連絡先
② 国民健康保険法の被保険者又は高齢者の医療の確保に関する法律の被保険者の場合に
は、氏名、生年月日、住所及び連絡先(国民健康保険組合の被保険者については、これらに加えて組合名)
を診療録等に記録しておくこと。
なお、申し立てた事項については、後日、保険者から患者に対し内容の確認が行われることがある旨を患者に周知するようご協力いただきたい。
4 その他
本事務連絡に基づき一部負担金等の支払いを猶予した場合は、患者負担分を含めて 10 割を審査支払機関等へ請求すること。
(以下略)
事務連絡(抜粋)は以上となります。
以上は台風第19号に係る事務連絡の事務連絡であり、令和元年11月30日の時点で、その12まで事務連絡が出されています。関東信越厚生局のウェブページで公開されています。
事務連絡の分量は大きく、医療機関や薬局の方は、すべてを理解することは難しいかもしれません。保険請求、個別指導関係の事務連絡の把握で精一杯かもしれません。しかし、被災地の地域の医療機関(医科、歯科医師)の方、また、薬局の方は、指導監査に関する適切な情報収集(なお、薬局・薬剤師の方の個別指導、監査はこちらのコラムが参考になります。)はもちろん、このような情報もできるだけ把握し、適切に医療機関等を運営していくことが望まれます。
現実的な対応としては、医師会、保険医協会など、保険請求に知見のある団体などに、また、(質問しづらいですが)保健所や厚生局などに、事後的に重大な誤りに気づくといったことがないよう、疑問点は積極的に確認していくことが重要です。
保険調剤での、調剤診療報酬点数表関係の疑義解釈(薬局個別指導)
厚生労働省保険局医療課による地方厚生局医療課など宛の平成30年3月30日付けの事務連絡である、「疑義解釈資料の送付について(その1)」の、調剤診療報酬点数表関係に関する部分をご説明します。関東信越厚生局のウェブページの公表資料に基づいています。
保険調剤を行う以上、厚生労働省の行政通知・疑義解釈にキャッチアップし、調剤報酬点数表の解釈を理解し、適切に調剤報酬を請求しなければなりません。その一例として、以下では保険調剤に係る調剤報酬点数表の疑義解釈を記載します。保険薬局の方は、内容を確認いただき、薬局の薬剤師の方と共有し、日々の調剤などにご活用下さい。
なお、厚生局の保険薬局・保険薬剤師の指導監査については、個別指導(薬局保険調剤)の弁護士コラムのウェブページが参考になります。
疑義解釈資料の送付について(その1)
診療報酬の算定方法の一部を改正する件(平成 30 年厚生労働省告示第43号)等については、「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(平成 30 年3月5日保医発 0305 第2号)等により、平成30年4月1日より実施することとしているところであるが、今般、その取扱いに係る疑義照会資料を別添1から別添5のとおり取りまとめたので、改定説明会等にて回答した事項と併せて、本事務連絡を確認の上、適切に運用いただくようお願いします。
調剤診療報酬点数表関係
【調剤基本料】
問1
特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合を算出する際に除くこととしている、同一グループの保険薬局の勤務者には、保険薬局に勤務する役員も含まれるか。また、例えば本社の間接部門の勤務者等についても、含まれるか。
(答)同一グループの保険薬局の勤務者には役員を含める。また、間接部門の勤務者等でも、保険薬局業務に関与する部門の勤務者であれば含める。
問2
特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合(処方箋集中率)について、「特定の保険医療機関に係る処方箋の受付回数(同一保険医療機関から、歯科と歯科以外の処方箋を受け付けた場合は、それらを合計した回数とする。)を、当該期間に受け付けた全ての処方箋の受付回数で除して得た値」とされたが、以下の場合の当該保険薬局の処方箋受付回数と集中率はどのように算出することになるか。
保険薬局の1年間の処方箋受付回数
A医療機関(歯科以外) 2,000 回
A医療機関(歯科) 100 回
A医療機関以外 20,000 回
※ A医療機関が最も処方箋受付回数が多い
(答)
処方箋受付回数について
2,000 + 100 + 20,000 = 22,100 回 となる。
処方箋集中率について
((2,000 + 100)/22,100)× 100 = 9.5% となる。
問3
調剤基本料の「注9」の医師の指示に伴う分割調剤について、例えば、分割指示が3回で、1回目は時間外加算の対象、2回目は時間外加算の対象外、3回目は時間外加算の対象の場合、どのように算定することになるか。
(答)それぞれの分割調剤を実施する日に、当該処方箋について分割調剤を実施しない場合に算定する点数(調剤基本料及びその加算、調剤料及びその加算並びに薬学管理料)を合算した点数の3分の1に相当する点数を算定する。したがって、調剤時に時間外加算の要件を満たす場合には、当該加算も合算した点数に基づき算定することになる。
【具体例】(90 日分処方 → 30 日×3 回の分割指示、調剤時には一包化を行う)
※薬剤料は調剤した分を算定
〈1回目〉
・調剤基本料 41 点
・地域支援体制加算 35 点
・調剤料(2剤の場合) 172 点(90 日分)
・一包化加算 220 点(90 日分)
・時間外加算 248 点
・薬剤服用歴管理指導料 41 点
計 757点 × 1/3 = 252.333≒252 点+薬剤料(30日分)
〈2回目〉
・調剤基本料 41 点
・地域支援体制加算 35 点
・調剤料(2剤の場合) 172 点(90 日分)
・一包化加算 220 点(90 日分)
・薬剤服用歴管理指導料 41 点
・服薬情報等提供料1 30 点
計 539 点 × 1/3 = 179.666≒180 点+薬剤料(30 日分)
〈3回目〉※時間外加算を含めて合算する。
・調剤基本料 41 点
・地域支援体制加算 35 点
・調剤料(2剤の場合) 172 点(90 日分)
・一包化加算 220 点(90 日分)
・時間外加算 248 点
・薬剤服用歴管理指導料 41 点
・服薬情報等提供料1 30 点
計 787 点 × 1/3 = 262.333≒262 点+薬剤料(30 日分)
【服薬情報等提供料】
問4
かかりつけ薬剤師指導料や在宅患者訪問薬剤管理指導料等を算定していない患者について、当該患者の介護にかかわっている介護支援専門員等からの求めに応じ、服薬状況の確認及び必要な指導の内容について提供した場合に、服薬情報等提供料2を算定して差し支えないか。
(答)患者の同意を得るなどの要件を満たせば、算定して差し支えない。
(中略)
【分割処方】
問6
分割指示に係る処方箋について、何回目の分割調剤であるかにかかわらず、別紙を含む全ての処方箋が提出されない場合は、処方箋を受け付けられないという理解でよいか。
(答)貴見のとおり。
(中略)
【薬剤服用歴管理指導料】
問12
薬剤服用歴管理指導料の特例について、「適切な手帳の活用実績が相当程度あると認められない保険薬局」に該当した場合であっても、直近3月間における割合が 50%を上回った場合には、その時点で「適切な手帳の活用実績が相当程度あると認められない保険薬局」に該当しないとされているが、日単位ではなく月単位で判断することでよいか。
(答)貴見のとおり。3月で算出した割合が 50%を上回った翌月から、通常の薬剤服用歴管理指導料を算定すること。
問13
調剤報酬明細書において、薬剤服用歴管理指導料について手帳の持参の有無等により分けて記載することとなったが、患者に交付する明細書についても同様に分けて記載すべきか。
(答)貴見のとおり。6月以内に再度処方箋を持参した患者か否か、6月以内に再度処方箋を持参した患者に対しては、手帳持参の有無が患者に分かるように記載すること。例えば、6月以内に再度処方箋を持参した患者の場合は薬剤服用歴管理指導料の記載に加えて「手帳あり」又は「手帳なし」を、6月以内に再度処方箋を持参した患者以外の患者の場合は同指導料の記載に加えて「6月外」を追記することなどが考えられる。
【在宅患者緊急時等共同指導料、退院時共同指導料】
問14
区分番号「15 の3」在宅患者緊急時等共同指導料及び区分番号「15 の4」退院時共同指導料における、カンファレンスや共同指導について、やむを得ない事情により対面が難しい場合、「リアルタイムでの画像を介したコミュニケーション(ビデオ通話)が可能な機器を用いた場合」、とあるが、①やむを得ない事情とはどのような場合か。②携帯電話による画像通信でもよいか。
(答)①天候不良により会場への手段がない場合や、急患の対応により間に合わなかった場合をいう。②リアルタイムで画像を含めたやり取りが可能であれば機器の種類は問わないが、個人情報を画面上で取り扱う場合は、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠した機器を用いること。
【その他】
問15
年度内に新規に開設した保険薬局に対する調剤基本料注3(50/100 減算)及び薬剤服用歴管理指導料の特例の適用期間はどのように考えたらよいか。
(答)開設日の属する月の翌月1日から1年間の実績により判断し、それ以降は前年3月から当年2月末までの実績により当年4月からの適用について判断すること。最初の判定までの間はこれらの減算又は特例は適用しないこと。
平成30年3月30日付けの薬局の調剤診療報酬点数表関係に関する疑義解釈の部分は以上のとおりです。
疑義解釈は、しばしば関東信越厚生局などのウェブページで公表されており、重要な疑義解釈も少なくありません。薬局の開設者においては、保険調剤の請求にあたり、最新の情報に常にキャッチアップすることが望まれます。薬局の管理薬剤師の方などは、たいへんですが、日常的に、目を通していくことが重要です。
保険診療のコラム,医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いの行政通知
保険診療において、様々な厚生労働省による行政通知、疑義解釈が公表されており、適切な保険診療を行うために、重要な資料となっています。医師、歯科医師、薬剤師は、保険診療に携わる以上、厚生労働省の保険診療に関する行政通知にキャッチアップしていかなればなりません。
ここでは、厚生労働省保険局医療課長などの、医薬品の適応外使用にかかる保険診療上の取扱いに関する、平成31年4月22日付けの行政通知(保医発0422第1号)をご紹介します。関東信越厚生局が公表している通知であり、適宜記載事項の編集等を行っています。
保健医療機関の方は、日常の適正な診療にご活用いただければ幸いです。なお、保険医療機関への行政指導・監査については、厚生局の指導監査の実例である個別指導・監査でのカルテの追記、書き換え、改ざんのコラムが参考になります。厚生局の監査などに伴い、カルテなどに関し追記、書き換え、改ざんなどを行い厚生局に虚偽の報告をすると、厚生局の厳しい対応に繋がります。
医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて
保険診療における医薬品の取扱いについては、厚生労働大臣が承認した効能又は効果、用法及び用量(以下「効能効果等」という。)によることとされているところであるが、「保険診療における医薬品の取扱いについて」(昭和55 年9月3日付保発第51号厚生省保険局長通知)により、有効性及び安全性の確認された医薬品(副作用報告義務期間又は再審査の終了した医薬品をいう。)が薬理作用に基づき処方された場合には、診療報酬明細書の医薬品の審査に当たり、学術的に正しく、また、全国統一的な対応が求められているところである。
これを踏まえ、今般、当該効能効果等の適応外使用の事例について、社会保険診療報酬支払基金が設置している「審査情報提供検討委員会」において検討が行われ、検討結果が取りまとめられたところである。
厚生労働省としては、別添の検討結果は妥当適切なものと考えているので、その取扱いに遺漏のないよう関係者に対し周知徹底を図られたい。
審査情報提供
第20次審査情報提供事例
審査情報提供事例№325
成分名オキサリプラチン②、レボホリナートカルシウム②、フルオロウラシル②(臨床腫瘍2)
325オキサリプラチン②、レボホリナートカルシウム②、フルオロウラシル②(臨床腫瘍2)
○標榜薬効(薬効コード)
⑴オキサリプラチン
その他の腫瘍用薬(429)
⑵レボホリナートカルシウム
解毒剤(392)
⑶フルオロウラシル
代謝拮抗剤(422)
○成分名
⑴オキサリプラチン【注射薬】
⑵レボホリナートカルシウム【注射薬】
⑶フルオロウラシル【注射薬】
○主な製品名
⑴オキサリプラチン
エルプラット点滴静注液50mg、同100mg、同200mg、他後発品あり
⑵レボホリナートカルシウム
アイソボリン点滴静注用25mg、同100mg、他後発品あり
⑶フルオロウラシル
5-FU注250mg、同1000mg、他後発品あり
○承認されている効能・効果
⑴オキサリプラチン(エルプラット点滴静注液50mg、同100mg、同200mg)
治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌
結腸癌における術後補助化学療法
治癒切除不能な膵癌
胃癌
小腸癌
⑵レボホリナートカルシウム(アイソボリン点滴静注用25mg、同100mg)
アレボホリナート・フルオロウラシル療法
胃癌(手術不能又は再発)及び結腸・直腸癌に対するフルオロウラシルの抗腫瘍効果の増強
イレボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法
結腸・直腸癌、小腸癌及び治癒切除不能な膵癌に対するフルオロウラシルの抗腫瘍効果の増強
⑶フルオロウラシル(5-FU注250mg、同1000mg)
下記疾患の自覚的並びに他覚的症状の緩解
胃癌、肝癌、結腸・直腸癌、乳癌、膵癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌
ただし、下記の疾患については、他の抗悪性腫瘍剤又は放射線と併用することが必要である。
食道癌、肺癌、頭頸部腫瘍
以下の悪性腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法
頭頸部癌
レボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法
結腸・直腸癌、小腸癌、治癒切除不能な膵癌
○承認されている用法・用量
⑴オキサリプラチン(エルプラット点滴静注液50mg、同100mg、同200mg)
治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌及び結腸癌における術後補助化学療法にはA法又はB法を、治癒切除不能な膵癌及び小腸癌にはA法を、胃癌にはB法を使用する。なお、患者の状態により適宜減量する。
A法:他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはオキサリプラチンとして85mg/㎡(体表面積)を1日1回静脈内に2時間で点滴投与し、少なくとも13日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。
B法:他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはオキサリプラチンとして130mg/㎡(体表面積)を1日1回静脈内に2時間で点滴投与し、少なくとも20日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。
⑵レボホリナートカルシウム(アイソボリン点滴静注用25mg、同100mg)
ア レボホリナート・フルオロウラシル療法
通常、成人にはレボホリナートとして1回250mg/㎡(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射開始1時間後にフルオロウラシルとして1回600mg/㎡(体表面積)を3分以内で緩徐に静脈内注射する。1週間ごとに6回繰り返した後、2週間休薬する。これを1クールとする。
イ 結腸・直腸癌に対するレボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法
(ア)通常、成人にはレボホリナートとして1回100mg/㎡(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射終了直後にフルオロウラシルとして400mg/㎡(体表面積)を静脈内注射するとともに、フルオロウラシルとして600mg/㎡(体表面積)を22時間かけて持続静脈内注射する。これを2日間連続して行い、2週間ごとに繰り返す。
(イ)通常、成人にはレボホリナートとして1回250mg/㎡(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射終了直後にフルオロウラシルとして2600mg/㎡(体表面積)を24時間かけて持続静脈内注射する。1週間ごとに6回繰り返した後、2週間休薬する。これを1クールとする。
(ウ)通常、成人にはレボホリナートとして1回200mg/㎡(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射終了直後にフルオロウラシルとして400mg/㎡(体表面積)を静脈内注射するとともに、フルオロウラシルとして2400~3000mg/㎡(体表面積)を46時間かけて持続静脈内注射する。これを2週間ごとに繰り返す。
ウ 小腸癌及び治癒切除不能な膵癌に対するレボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法
通常、成人にはレボホリナートとして1回200mg/㎡(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射終了直後にフルオロウラシルとして400mg/㎡(体表面積)を静脈内注射するとともに、フルオロウラシルとして2400mg/㎡(体表面積)を46時間かけて持続静脈内注射する。これを2週間ごとに繰り返す。
⑶フルオロウラシル(5-FU注250mg、同1000mg)
ア 単独で使用する場合
(ア)フルオロウラシルとして、通常、成人には1日5〜15mg/kgを最初の5日間連日1日1回静脈内に注射又は点滴静注する。以後5〜7.5mg/kgを隔日に1日1回静脈内に注射又は点滴静注する。
(イ)フルオロウラシルとして、通常、成人には1日5〜15mg/kgを隔日に1日1回静脈内に注射又は点滴静注する。
(ウ)フルオロウラシルとして、通常、成人には1日5mg/kgを10〜20日間連日1日1回静脈内に注射又は点滴静注する。
(エ)フルオロウラシルとして、通常、成人には1日10〜20mg/kgを週1回静脈内に注射又は点滴静注する。
また、必要に応じて動脈内に通常、成人には1日5mg/kgを適宜注射する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
イ 他の抗悪性腫瘍剤又は放射線と併用する場合
フルオロウラシルとして、通常、成人には1日5〜10mg/kgを他の抗悪性腫瘍剤又は放射線と併用し、アの方法に準じ、又は間歇的に週1〜2回用いる。
ウ 頭頸部癌に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法の場合
他の抗悪性腫瘍剤との併用療法において、通常、成人にはフルオロウラシルとして1日1000mg/㎡(体表面積)までを、4〜5日間連日で持続点滴する。投与を繰り返す場合には少なくとも3週間以上の間隔をあけて投与する。本剤単独投与の場合には併用投与時に準じる。
なお、年齢、患者の状態などにより適宜減量する。
エ 結腸・直腸癌に対するレボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法
(ア)通常、成人にはレボホリナートとして1回100mg/㎡(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射終了直後にフルオロウラシルとして400mg/㎡(体表面積)を静脈内注射、さらにフルオロウラシルとして600mg/㎡(体表面積)を22時間かけて持続静注する。これを2日間連続して行い、2週間ごとに繰り返す。
(イ)通常、成人にはレボホリナートとして1回250mg/㎡(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射終了直後にフルオロウラシルとして2600mg/㎡(体表面積)を24時間持続静注する。1週間ごとに6回繰り返した後、2週間休薬する。これを1クールとする。
(ウ)通常、成人にはレボホリナートとして1回200mg/㎡(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射終了直後にフルオロウラシルとして400mg/㎡(体表面積)を静脈内注射、さらにフルオロウラシルとして2400〜3000mg/㎡(体表面積)を46時間持続静注する。これを2週間ごとに繰り返す。
なお、年齢、患者の状態などにより適宜減量する。
オ 小腸癌及び治癒切除不能な膵癌に対するレボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法
通常、成人にはレボホリナートとして1回200mg/㎡(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射終了直後にフルオロウラシルとして400mg/㎡(体表面積)を静脈内注射、さらにフルオロウラシルとして2400mg/㎡(体表面積)を46時間持続静注する。これを2週間ごとに繰り返す。
なお、年齢、患者の状態などにより適宜減量する。
○薬理作用
⑴オキサリプラチン
DNAの複製及び転写阻害
⑵レボホリナートカルシウム
フルオロウラシルの抗腫瘍効果増強作用
⑶フルオロウラシル
DNA合成阻害作用
○使用例
原則として、「フルオロウラシル、レボホリナートカルシウム、オキサリプラチン【注射薬】」をFOLFOX療法として「食道癌」に対して投与した場合、当該使用事例を審査上認める。
○使用例において審査上認める根拠
薬理作用が同様と推定される。
○留意事項
当該使用例の用法・用量
⑴オキサリプラチン
他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはオキサリプラチンとして85mg/㎡(体表面積)を1日1回静脈内に2時間で点滴投与し、少なくとも13日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。
⑵レボホリナートカルシウム・フルオロウラシル
通常、成人にはレボホリナートとして1回200mg/㎡(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射終了直後にフルオロウラシルとして400mg/㎡(体表面積)を静脈内注射するとともに、フルオロウラシルとして2400mg/㎡(体表面積)を46時間かけて持続静脈内注射する。 これを2週間ごとに繰り返す。
なお、年齢、患者の状態などにより適宜減量する。
○その他参考資料等
⑴Esophageal and Esophagogastric Junction Cancers version1.2018(NCCNガイドライン)
⑵ Oesophageal cancer: ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up(ESMOガイドライン)
医薬品の適応外使用にかかる保険診療上の取扱いに係る行政通知は以上とおりです。冒頭のカルテ(診療録)の追記、改ざん、書き換えのコラムも含め、日常の診療の際や、厚生局の個別指導の際などにご活用下さい。
医科、歯科、薬局の個別指導の実施状況(平成29年度)
まず、厚生労働省の公表資料から、医科や歯科の医療機関、また、調剤薬局についての、年間の個別指導や監査などの実施状況について、説明をしていきます。
第1 指導監査(厚生局)の実施件数等の統計データ
個別指導について知るためには、厚生局により、年間どのくらいの件数が実施され、どのような結果となっているか、統計的なデータを把握することがまず必要です。実際の数値を把握することで、おかれた状況等、的確に把握することが可能になるためです。
なお、保険医療機関への個別指導の実施の流れ、対応方法については、例えば歯科については、弁護士の歯科のホームページのコラムで詳細な記載があります。上記は、歯科の医療機関を対象とするコラムですが、基本的には、医科も薬局も、同様の仕組みとなります。
詳しく知りたい場合は、保険医協会などの書籍を購入し熟読することが考えられます。また、厚生労働省のウェブページ上にも、保険医療機関等への個別指導などの統計的な数値を含め、保険診療の指導監査の情報が公開されています。個別指導の書籍は、仕組みが徐々に変更されているため、最新の情報を知ることがポイントであり、記載内容が古い情報ではないか、留意する必要があります。インターネットで、歯科個別指導の書籍を立ち読みすることもできます。
説明を戻し厚生労働省の公表資料ですが、毎年、前年度のデータが厚生労働省のホームページ上で公開されており、今記事作成段階での直近のものは、平成30年12月18日付けのもので、平成29年度のデータとなっています。
1 指導・監査の実施件数
まず、指導監査の実施件数についてですが、個別指導については、4617件となっており、対前年度比は、94件増となっています。この数値は、医科、歯科、薬局の個別指導のすべてを含む数値となっています。
新規個別指導については、6145件となっており、対前年度比で、28件減となっています。新規個別指導は、基本的には、新規に診療所や薬局などを開設した場合に、1年以内に実施されるものとなります。ただし、都道府県によっては、1年以上経ってから、新規個別指導が実施される場合もあります。
なお、新規個別指導については、弁護士による医科の新規個別指導のコラムが参考になります。
適時調査については、3643件となっており、こちらは、280件増となっています。病院に対する適時調査は、近年、厚生労働省が力を入れている分野であるというべきかもしれません。
そして、監査は、66件となっており、8件減となっています。監査まで至る場合は、事前に患者調査が実施されていることが多く、監査まで至ると、その保険医療機関などは大きな経営的な痛手を被ることになります。
2 取消しの状況
次に、取り消しの状況ですが、医科、歯科、薬局の全体として、保険医療機関等の指定取消しが13件、指定取消相当が15件、合計28件(対前年度比1件増)となっています。また、医師、歯科医師、薬剤師などの保険医等の登録取消しが17人、登録取消相当が1人、合計18人(対前年度比3人減)となっています。
以上の特徴ですが、保険医療機関の指定の取消処分及び指定の取消相当の原因、不正の内容を調査すると、不正請求、具体的には、診療がないのに診療報酬を請求してしまう架空請求、実際に行った診療に行っていない診療を付け加えて請求してしまう付け増し請求、実際の診療を保険点数の高い別の診療に振り替えて請求してしまう振替請求、自費で診療を行い費用を受領しているにもかかわらず保険でも診療報酬を請求してしまう二重請求がそのほとんどを占めている、とのことです。
また、指定の取り消し処分、取消相当に至る端緒は、すなわちその医療機関に対して個別指導に至った端緒は、保険者、医療機関従事者、医療費通知に基づく被保険者からの通報が21件と、取消しとなった場合の多数を占めている、とのことです。実感として、情報提供による個別指導となった場合は、個別指導が中断となり、患者調査が実施されるケースが散見されます。患者調査の結果、不正請求の疑いが濃厚となった場合は、厚生局は、監査に踏み切ってくることが考えられます。
情報提供・通報で個別指導となった場合は、医療機関側としては、監査の可能性を想定し、より慎重に対応することが求められるというべきです。
3 返還金額
厚生局などが、保険医療機関から返還を求めた額は、約72億0千万円(対前年度比約17億0千万円減)となっています。72億円というと、かなり大きな金額となりますが、その主要な部分は、病院など、規模の大きな保険医療機関に対する適時調査や個別指導、監査の結果、不適切な請求が明らかとなり、返還に至ったものであると考えられます。
具体的には、指導による返還分が約31億3千万円(対前年度比約約9億6千万円減)、適時調査による返還分が約36億8千万円(対前年度比約6億8千万円減)、監査による返還分約4億0千万円(対前年度比約5千万円減)となっています。
以上が、厚生労働省の保険医療機関への個別指導・監査の統計的な概要となります。医科、歯科、薬局の医療機関関係者におかれましては、個別指導、監査となった場合は、直近のものを確認し、最新の状況を把握することをお勧めします。