保険医療機関等(医科、歯科、薬局、柔整)の個別指導・監査

厚生局の保険医療機関等(医科、歯科、薬局、柔整)の個別指導や監査について、情報提供を行います。

保険医療機関における本人確認

保険医療機関においては、日々保険証の確認、取扱いが求められますが、その扱いについては、医療機関ごとに様々である印象です。特に、医科、歯科の個人の診療所においては、院長の方針や考え方により、対応は大きく変わります。

厚生局の個別指導、特に歯科においては、健康保険の保険証の扱いについて、口頭で厚生局の事務官から確認されることが多いのですが、細かく厳密に確認されるのではなく、ざっくりと明らかに不適切という場合に、改めるよう指摘されているイメージです。よく指摘される点としては、保険証のコピーを患者の承諾を得て紙ベースで取得し、それをカルテに添付し保管を続けていることは、患者の個人情報保護の観点から不適切であり、コピーをそもそも取得しないか、取得する場合は必要性がなくなれば速やかにシュレッダーなどで廃棄する、という点です。医科、歯科、薬局の保険医療機関等だけではなく、整骨院の個別指導(柔整)でも、同様の指摘が厚生局側からよくなされます。

さて、ここでは、保険医療機関における本人確認について、オンライン資格確認の運用開始に起因する新しい行政通知が、令和2年1月10日付けで、厚生労働省保険局から出ましたので、ご紹介をさせていただきます。

 

保険医療機関等において本人確認を実施する場合の方法について

保険医療機関及び保険薬局(以下「保険医療機関等」という。)において本人確認を
実施する場合の方法について、下記のとおり示すため、内容を御了知の上、適切に御
対応頂きたい。なお、本通知は、保険医療機関等に本人確認を義務付けるものではな
いことに御留意頂きたい。

第1 基本的な考え方

1 本人確認の必要性について

(1) 医療保険制度の健全運営を維持する観点
医療保険制度は、保険料を納付することで保険給付が受けられる仕組み(被保険者証は適切に保険料を納付している者であることを保険者として明らかにする証)であることから、他人の被保険者証を流用した受診が行われた場合には、保険料の納付なしで保険給付がなされることとなるため、持続的な保険財政の確保の観点から問題が生じる。また、保険料を適切に納付している被保険者の医療保険制度への信頼感を損なうおそれがあること。

(2) 保険医療機関等を受診する患者の医療安全の観点
過去に被保険者証記載の本人が受診したことがある保険医療機関等において、他人が偽って受診した場合、過去の診療記録を基に医療が提供された結果、身体に異常を来すことなどのおそれがあること。

(3) 犯罪被害を防ぐ観点
他人の被保険者証を流用した受診は、詐欺罪(刑法第 246 条)等に当たり得ること。


2 対応方針
2020 年度のオンライン資格確認の運用開始に伴い、マイナンバーカードのICチップの読み取りによりオンライン資格確認を行う保険医療機関等においては、マイナンバーカードによる本人確認が可能となる。

一方、各保険医療機関等がオンライン資格確認を導入し、患者によるマイナンバーカードの提示が普及するまでの対応として、保険医療機関等が必要と判断する場合には、被保険者証とともに本人確認書類の提示を求めることができること。


第2 保険医療機関等における本人確認の具体的な方法について

保険医療機関等において、窓口での本人確認の必要性が高いと考える場合は、過去の診療履歴等により本人であることが明らかな事例や本人確認書類の提示が困難な子どもの事例など、一定のケースを除いて、外来患者に幅広く本人確認書類の提示を求めることができる。その際、本人確認が恣意的に行われることで患者に混乱が生じることがないよう、以下の点に留意して本人確認を行う。

なお、上記のような幅広い範囲での本人確認を実施しない保険医療機関等においても、例えば、過去の診療履歴等に照らして血液型や身長が違っているなど、本人であることに合理的な疑いがある場合に、個別に本人確認を行うことは差し支えない。

(1) 保険医療機関等の判断で本人確認を実施する場合には、国籍による差別とならないよう、国籍に応じて本人確認の実施の有無を判断しないこと。

(2) 提示された被保険者証が本人のものでないと判断される場合には、当該被保険者証を用いた保険診療は認められないが、すべての患者が顔写真付きの本人確認書類を所持しているわけではないことに鑑み、本人確認書類が提示されなかったことのみをもって保険診療を否定しないこと。

(3) 本人確認書類(写真付き身分証)については、以下に掲げるものを参考とすること。
(写真付き身分証の例)
運転免許証、運転経歴証明書(平成 24 年4月1日以降交付のもの)、旅券、個人番号カード(マイナンバーカード)、在留カード特別永住者証明書、官公庁が顔写真を貼付した書類(身体障害者手帳等)


第3 周知等について
幅広い範囲での本人確認を実施するに当たっては、保険医療機関等において事前に掲示等を行うことにより、患者が保険医療機関等を受診する際に混乱を生じさせないよう十分な期間を設けて周知を行うこと。

 

行政通知は以上となります。

保険証の取扱いについては、厚生局の医療機関への個別指導でも(ケースによっては)問題とされることがあり、指摘事項として挙げられることもありますので、保険医療機関の運営において気を付けているところと思われますが、本人確認については、腰を落ち着けて検討したことがない方も多いかもしれません。

なりすましなどの悪質なケースも実際に存在しますので、本人確認の方法、ルールについて、きちんと院内・局内でマニュアル化し、周知徹底の上で、適切に運用することが望まれます。

特に近年では、マイナンバーカードの健康保険証としての取扱いに関して、行政の運用が大きく変わりうるところですので、最新の情報を注視していくことが重要です。