保険医療機関等(医科、歯科、薬局、柔整)の個別指導・監査

厚生局の保険医療機関等(医科、歯科、薬局、柔整)の個別指導や監査について、情報提供を行います。

医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱い

 

厚生労働省保険局医療課長などの、医薬品の適応外使用にかかる保険診療上の取扱いに関する、平成31年4月22日付けの行政通知(保医発0422第1号)をご紹介します。関東信越厚生局が公表している通知であり、適宜記載事項の編集等を行っています。

保健医療機関の方は、日常の適正な診療にご活用いただければ幸いです。なお、保険医療機関への行政指導・監査については、厚生局の指導監査の実例である個別指導・監査でのカルテの追記、書き換え、改ざんのコラムが参考になります。厚生局の監査などに伴い、カルテなどに関し追記、書き換え、改ざんなどを行い厚生局に虚偽の報告をすると、厚生局の厳しい対応に繋がります。

 

医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて

保険診療における医薬品の取扱いについては、厚生労働大臣が承認した効能又は効果、用法及び用量(以下「効能効果等」という。)によることとされているところであるが、「保険診療における医薬品の取扱いについて」(昭和55 年9月3日付保発第51号厚生省保険局長通知)により、有効性及び安全性の確認された医薬品(副作用報告義務期間又は再審査の終了した医薬品をいう。)が薬理作用に基づき処方された場合には、診療報酬明細書の医薬品の審査に当たり、学術的に正しく、また、全国統一的な対応が求められているところである。
これを踏まえ、今般、当該効能効果等の適応外使用の事例について、社会保険診療報酬支払基金が設置している「審査情報提供検討委員会」において検討が行われ、検討結果が取りまとめられたところである。
厚生労働省としては、別添の検討結果は妥当適切なものと考えているので、その取扱いに遺漏のないよう関係者に対し周知徹底を図られたい。

 

審査情報提供

社会保険診療報酬支払基金
審査情報提供検討委員会

 

第20次審査情報提供事例
審査情報提供事例№325
成分名オキサリプラチン②、レボホリナートカルシウム②、フルオロウラシル②(臨床腫瘍2)


325オキサリプラチン②、レボホリナートカルシウム②、フルオロウラシル②(臨床腫瘍2)


○標榜薬効(薬効コード)
⑴オキサリプラチン
その他の腫瘍用薬(429)
⑵レボホリナートカルシウム
解毒剤(392)
⑶フルオロウラシル
代謝拮抗剤(422)

 

○成分名
⑴オキサリプラチン【注射薬】
⑵レボホリナートカルシウム【注射薬】
⑶フルオロウラシル【注射薬】

 

○主な製品名
⑴オキサリプラチン
エルプラット点滴静注液50mg、同100mg、同200mg、他後発品あり
⑵レボホリナートカルシウム
アイソボリン点滴静注用25mg、同100mg、他後発品あり
⑶フルオロウラシル
5-FU注250mg、同1000mg、他後発品あり

 

○承認されている効能・効果
⑴オキサリプラチン(エルプラット点滴静注液50mg、同100mg、同200mg)
治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌
結腸癌における術後補助化学療法
治癒切除不能な膵癌
胃癌
小腸癌
⑵レボホリナートカルシウム(アイソボリン点滴静注用25mg、同100mg)
アレボホリナート・フルオロウラシル療法
胃癌(手術不能又は再発)及び結腸・直腸癌に対するフルオロウラシルの抗腫瘍効果の増強
イレボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法
結腸・直腸癌、小腸癌及び治癒切除不能な膵癌に対するフルオロウラシルの抗腫瘍効果の増強
⑶フルオロウラシル(5-FU注250mg、同1000mg)
下記疾患の自覚的並びに他覚的症状の緩解
胃癌、肝癌、結腸・直腸癌、乳癌、膵癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌
ただし、下記の疾患については、他の抗悪性腫瘍剤又は放射線と併用することが必要である。
食道癌、肺癌、頭頸部腫瘍
以下の悪性腫瘍に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法
頭頸部癌
レボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法
結腸・直腸癌、小腸癌、治癒切除不能な膵癌


○承認されている用法・用量
⑴オキサリプラチン(エルプラット点滴静注液50mg、同100mg、同200mg)
治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌及び結腸癌における術後補助化学療法にはA法又はB法を、治癒切除不能な膵癌及び小腸癌にはA法を、胃癌にはB法を使用する。なお、患者の状態により適宜減量する。
A法:他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはオキサリプラチンとして85mg/㎡(体表面積)を1日1回静脈内に2時間で点滴投与し、少なくとも13日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。
B法:他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはオキサリプラチンとして130mg/㎡(体表面積)を1日1回静脈内に2時間で点滴投与し、少なくとも20日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。
⑵レボホリナートカルシウム(アイソボリン点滴静注用25mg、同100mg)
ア レボホリナート・フルオロウラシル療法
通常、成人にはレボホリナートとして1回250mg/㎡(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射開始1時間後にフルオロウラシルとして1回600mg/㎡(体表面積)を3分以内で緩徐に静脈内注射する。1週間ごとに6回繰り返した後、2週間休薬する。これを1クールとする。
イ 結腸・直腸癌に対するレボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法
(ア)通常、成人にはレボホリナートとして1回100mg/㎡(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射終了直後にフルオロウラシルとして400mg/㎡(体表面積)を静脈内注射するとともに、フルオロウラシルとして600mg/㎡(体表面積)を22時間かけて持続静脈内注射する。これを2日間連続して行い、2週間ごとに繰り返す。
(イ)通常、成人にはレボホリナートとして1回250mg/㎡(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射終了直後にフルオロウラシルとして2600mg/㎡(体表面積)を24時間かけて持続静脈内注射する。1週間ごとに6回繰り返した後、2週間休薬する。これを1クールとする。
(ウ)通常、成人にはレボホリナートとして1回200mg/㎡(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射終了直後にフルオロウラシルとして400mg/㎡(体表面積)を静脈内注射するとともに、フルオロウラシルとして2400~3000mg/㎡(体表面積)を46時間かけて持続静脈内注射する。これを2週間ごとに繰り返す。
ウ 小腸癌及び治癒切除不能な膵癌に対するレボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法
通常、成人にはレボホリナートとして1回200mg/㎡(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射終了直後にフルオロウラシルとして400mg/㎡(体表面積)を静脈内注射するとともに、フルオロウラシルとして2400mg/㎡(体表面積)を46時間かけて持続静脈内注射する。これを2週間ごとに繰り返す。
⑶フルオロウラシル(5-FU注250mg、同1000mg)
ア 単独で使用する場合
(ア)フルオロウラシルとして、通常、成人には1日5〜15mg/kgを最初の5日間連日1日1回静脈内に注射又は点滴静注する。以後5〜7.5mg/kgを隔日に1日1回静脈内に注射又は点滴静注する。
(イ)フルオロウラシルとして、通常、成人には1日5〜15mg/kgを隔日に1日1回静脈内に注射又は点滴静注する。
(ウ)フルオロウラシルとして、通常、成人には1日5mg/kgを10〜20日間連日1日1回静脈内に注射又は点滴静注する。
(エ)フルオロウラシルとして、通常、成人には1日10〜20mg/kgを週1回静脈内に注射又は点滴静注する。
また、必要に応じて動脈内に通常、成人には1日5mg/kgを適宜注射する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
イ 他の抗悪性腫瘍剤又は放射線と併用する場合
フルオロウラシルとして、通常、成人には1日5〜10mg/kgを他の抗悪性腫瘍剤又は放射線と併用し、アの方法に準じ、又は間歇的に週1〜2回用いる。
ウ 頭頸部癌に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用療法の場合
他の抗悪性腫瘍剤との併用療法において、通常、成人にはフルオロウラシルとして1日1000mg/㎡(体表面積)までを、4〜5日間連日で持続点滴する。投与を繰り返す場合には少なくとも3週間以上の間隔をあけて投与する。本剤単独投与の場合には併用投与時に準じる。
なお、年齢、患者の状態などにより適宜減量する。
エ 結腸・直腸癌に対するレボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法
(ア)通常、成人にはレボホリナートとして1回100mg/㎡(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射終了直後にフルオロウラシルとして400mg/㎡(体表面積)を静脈内注射、さらにフルオロウラシルとして600mg/㎡(体表面積)を22時間かけて持続静注する。これを2日間連続して行い、2週間ごとに繰り返す。
(イ)通常、成人にはレボホリナートとして1回250mg/㎡(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射終了直後にフルオロウラシルとして2600mg/㎡(体表面積)を24時間持続静注する。1週間ごとに6回繰り返した後、2週間休薬する。これを1クールとする。
(ウ)通常、成人にはレボホリナートとして1回200mg/㎡(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射終了直後にフルオロウラシルとして400mg/㎡(体表面積)を静脈内注射、さらにフルオロウラシルとして2400〜3000mg/㎡(体表面積)を46時間持続静注する。これを2週間ごとに繰り返す。
なお、年齢、患者の状態などにより適宜減量する。
オ 小腸癌及び治癒切除不能な膵癌に対するレボホリナート・フルオロウラシル持続静注併用療法
通常、成人にはレボホリナートとして1回200mg/㎡(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射終了直後にフルオロウラシルとして400mg/㎡(体表面積)を静脈内注射、さらにフルオロウラシルとして2400mg/㎡(体表面積)を46時間持続静注する。これを2週間ごとに繰り返す。
なお、年齢、患者の状態などにより適宜減量する。

 

○薬理作用
⑴オキサリプラチン
DNAの複製及び転写阻害
⑵レボホリナートカルシウム
フルオロウラシルの抗腫瘍効果増強作用
⑶フルオロウラシル
DNA合成阻害作用

 

○使用例
原則として、「フルオロウラシル、レボホリナートカルシウム、オキサリプラチン【注射薬】」をFOLFOX療法として「食道癌」に対して投与した場合、当該使用事例を審査上認める。

 

○使用例において審査上認める根拠
薬理作用が同様と推定される。

 

○留意事項
当該使用例の用法・用量
⑴オキサリプラチン
他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはオキサリプラチンとして85mg/㎡(体表面積)を1日1回静脈内に2時間で点滴投与し、少なくとも13日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。
⑵レボホリナートカルシウム・フルオロウラシル
通常、成人にはレボホリナートとして1回200mg/㎡(体表面積)を2時間かけて点滴静脈内注射する。レボホリナートの点滴静脈内注射終了直後にフルオロウラシルとして400mg/㎡(体表面積)を静脈内注射するとともに、フルオロウラシルとして2400mg/㎡(体表面積)を46時間かけて持続静脈内注射する。 これを2週間ごとに繰り返す。
なお、年齢、患者の状態などにより適宜減量する。

 

○その他参考資料等
⑴Esophageal and Esophagogastric Junction Cancers version1.2018(NCCNガイドライン
⑵ Oesophageal cancer: ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up(ESMOガイドライン

 

 

医薬品の適応外使用にかかる保険診療上の取扱いに係る行政通知は以上とおりです。冒頭のカルテ(診療録)の追記、改ざん、書き換えのコラムも含め、日常の診療の際や、厚生局の個別指導の際などにご活用下さい。