保険医療機関等(医科、歯科、薬局、柔整)の個別指導・監査

厚生局の保険医療機関等(医科、歯科、薬局、柔整)の個別指導や監査について、情報提供を行います。

医科、歯科、薬局の個別指導の実施状況(平成29年度)

まず、厚生労働省の公表資料から、医科や歯科の医療機関、また、調剤薬局についての、年間の個別指導や監査などの実施状況について、説明をしていきます。

 

個別指導について知るためには、厚生局により、年間どのくらいの件数が実施され、どのような結果となっているか、統計的なデータを把握することがまず必要です。なお、保険医療機関への個別指導の実施の流れ、対応方法については、例えば歯科については、弁護士の歯科のホームページのコラムで詳細な記載があります。上記は、歯科の医療機関を対象とするコラムですが、基本的には、医科も薬局も、同様の仕組みとなります。

詳しく知りたい場合は、保険医協会などの書籍を購入し熟読することが考えられます。また、厚生労働省のウェブページ上にも、保険医療機関等への個別指導などの統計的な数値を含め、保険診療の指導監査の情報が公開されています。個別指導の書籍は、仕組みが徐々に変更されているため、最新の情報を知ることがポイントであり、記載内容が古い情報ではないか、留意する必要があります。インターネットで、歯科個別指導の書籍を立ち読みすることもできます。

 

説明を戻し厚生労働省の公表資料ですが、毎年12月ころ、前年度のデータが厚生労働省のホームページ上で公開されており、直近のものは、平成30年12月18日付けのもので、平成29年度のデータとなっています。

 

1 指導・監査の実施件数

まず、指導監査の実施件数についてですが、個別指導については、4617件となっており、対前年度比は、94件増となっています。この数値は、医科、歯科、薬局の個別指導のすべてを含む数値となっています。

新規個別指導については、6145件となっており、対前年度比で、28件減となっています。新規個別指導は、基本的には、新規に診療所や薬局などを開設した場合に、1年以内に実施されるものとなります。ただし、都道府県によっては、1年以上経ってから、新規個別指導が実施される場合もあります。

適時調査については、3643件となっており、こちらは、280件増となっています。病院に対する適時調査は、近年、厚生労働省が力を入れている分野であるというべきかもしれません。

そして、監査は、66件となっており、8件減となっています。監査まで至る場合は、事前に患者調査が実施されていることが多く、監査まで至ると、その保険医療機関などは大きな経営的な痛手を被ることになります。

 

2 取消しの状況

次に、取り消しの状況ですが、医科、歯科、薬局の全体として、保険医療機関等の指定取消しが13件、指定取消相当が15件、合計28件(対前年度比1件増)となっています。また、医師、歯科医師、薬剤師などの保険医等の登録取消しが17人、登録取消相当が1人、合計18人(対前年度比3人減)となっています。

以上の特徴ですが、保険医療機関の指定の取消処分及び指定の取消相当の原因、不正の内容を調査すると、不正請求、具体的には、診療がないのに診療報酬を請求してしまう架空請求、実際に行った診療に行っていない診療を付け加えて請求してしまう付け増し請求、実際の診療を保険点数の高い別の診療に振り替えて請求してしまう振替請求、自費で診療を行い費用を受領しているにもかかわらず保険でも診療報酬を請求してしまう二重請求がそのほとんどを占めている、とのことです。

また、指定の取り消し処分、取消相当に至る端緒は、すなわちその医療機関に対して個別指導に至った端緒は、保険者、医療機関従事者、医療費通知に基づく被保険者からの通報が21件と、取消しとなった場合の多数を占めている、とのことです。実感として、情報提供による個別指導となった場合は、個別指導が中断となり、患者調査が実施されるケースが散見されます。患者調査の結果、不正請求の疑いが濃厚となった場合は、厚生局は、監査に踏み切ってくることが考えられます。

 

3 返還金額

厚生局などが、保険医療機関から返還を求めた額は、約72億0千万円(対前年度比約17億0千万円減)となっています。72億円というと、かなり大きな金額となりますが、その主要な部分は、病院など、規模の大きな保険医療機関に対する適時調査や個別指導、監査の結果、不適切な請求が明らかとなり、返還に至ったものであると考えられます。

具体的には、指導による返還分が約31億3千万円(対前年度比約約9億6千万円減)、適時調査による返還分が約36億8千万円(対前年度比約6億8千万円減)、監査による返還分約4億0千万円(対前年度比約5千万円減)となっています。

 

以上が、厚生労働省の保険医療機関への個別指導・監査の統計的な概要となります。